新年初めて行われる能は「翁」から始まります。別名「式三番」とも呼ばれ、翁・千歳・三番叟の三役が天下泰平、延命寿福を祈願する神事性の高い演目です。
今回、能楽「翁」で演奏される大小鼓と笛の演奏のみを組曲として、途中に大鼓方が歩いて登場する、打ち掛かりという演出をいたします。
乁黒髪の結ぼれたる思いには 解けて寝た夜の枕とて 独り寝る夜の仇枕
袖は片敷く妻じゃと言うて 愚痴な女子の心も知らず しんと更けたる鐘の声 夕べの夢の今朝覚めて
床し懐かし遣る瀬なや 積もると知らで 積もる白雪
去って行った男に向けた女の肉感的な情愛をうたった長唄です。本来は唄一人、三味線一人で演奏する独吟物ですが、今回は三味線を外し、唄と笛による歌曲としました。
1996年後藤浩明作曲。21世紀に入りコンピューターの進歩は目覚しく、近い将来、人間の頭脳を越えると言われています。コンピューターが作り出す、正確無比な音程とリズムに、 竹から作り出された素朴な笛が挑みます。
能「高砂」の乁高砂やこの浦舟に帆を上げて~の謡は結婚式で謡われる目出度い曲として有名です。
能「高砂」は播州高砂の松と摂津住之江の松は夫婦松であれ、その松の両神が現れて夫婦和合と繁栄を祝福する曲です。
歌舞伎舞踏「高砂丹前」は、前半能「高砂」の様式で踊り、後半丹前物と呼ばれる伊達な風俗を競う舞踏に変化します。庶民の芸能である歌舞伎が持つパロディ精神溢れる曲です。
今回、曲の後半に後シテ(主役)の登場曲「出端」と、シテが颯爽と舞う「神舞」を太鼓、大小鼓、笛による素囃子として挿入しました。